本賞は、次世代を担う学生の研究活動を奨励するために、九州・沖縄地区の大学・高専に在学し、
IEEEの発行する論文誌やジャーナル等に掲載された論文または掲載決定済みの論文やIEEE の主催、共催又は
協賛する査読あり国際会議の英文プロシーディングスに掲載または掲載決定済みの優秀な英語論文を発表され
た学生を表彰するものです。

　受賞対象の研究は、パワーデバイスの絶縁異常診断に関するものです。
電気自動車や重電分野の産業機器などに使用される大出力のインバータは高い信頼性が求められており、イン
バータを構成するパワーデバイスにも高い信頼性と安全性が要求されています。シリコーンゲルはパワーデバ
イスの絶縁・封止材であり、受賞者らの研究グループではシリコーンゲルの電気絶縁特性ならびに絶縁破壊に
至る放電進展特性をこれまで検討してきました。本研究は、シリコーンゲルの絶縁破壊に至るまでの放電現象
を、帯域の異なる2種類のアンテナを用いて非接触で観測し、代表的な2種類のシリコーンゲルを用いて検出特
性を比較検討しました。
その結果、絶縁破壊の発生前に放電による放射電磁波信号を検出できることを実験により明らかにし、アン
テナ種類により検出強度が異なることを示しました。この結果から、信号検出に最適な検出帯域が存在するこ
とがわかり、ゲル種類に関わらず絶縁破壊に進展する放電群は破壊前の数10～数100 マイクロ秒から検出でき
ることを明らかにしました。